漏水トラブル
水道管の腐食を起因とした漏水トラブルです。
配管材料にはいくつかの種類がありますが、昭和45年半ばまでは防錆(ぼうせい)
のために内面を亜鉛めっきした「水道用亜鉛めっき鋼管」が多くのマンションで
採用されていました。
当時としては最適でしたが、亜鉛が溶出して鉄部が露出すると腐食が始まる
難点があり、こうした弱点が配管の寿命を縮めることとなったのです。
その結果、技術開発によって以後のマンションでは塩化ビニールやステンレスを
使用することで問題は鎮静化の方向に向かいましたが、当時に建てられた高経年
マンションでは赤水や漏水トラブルが多発するようになったのです。
なぜ、古いマンションでは配管からの漏水トラブルが絶えないのでしょうか?
そこには共同住宅ならではの理由が存在します。
まず1つ目が設計上の問題。
最近の分譲マンションは二重床・二重天井が主流になっていますが、30年以上も
前のマンションになると床下の配管は埋設されていることが珍しくなかったのです。
天井高を確保しようとコンクリートスラブの上に直接、カーペットやフローリング
を敷設したため、床下を通る配管は軽量(気泡)コンクリートに埋められて
しまっているのです。
いざ更新(取り換え)しようと思っても簡単には事が運ばず、コンクリートを
削るという大掛かりな工事になってしまうことが組合員の腰を重くしたのでした。
そこで、埋設せずにコンクリートスラブの下(=下階の天井裏)に排水管を
施工することで、維持管理に配慮したマンションが登場するようになったのです。
これによりメンテナンスがしやすくなると思われましたが、一転、予期せぬ
新たな問題が浮上することとなってしまったのです。
下階の天井裏を通る横引き配管(枝管)が「専有部分」なのか「共用部分」
なのか、2つ目の問題です。
スラブ下配管が専有部分だとすると、維持管理の責任主体は区分所有者本人に
なります。
各個人の裁量と費用負担において、おのおのが工事を行わなければなりません。
一方、共用部分だとすると責任主体は管理組合になるため、区分所有者全員に
よる費用負担で、管理組合が工事を計画・実施することになるわけです。
直接、目に触れる機会が少ないため、どうしても配管に対する関心は低くなって
しまうのが3つ目の問題です。
水道管の更新は、分譲マンションに住んでいて1回あるかないかといった頻度の
工事のため、その必要性を認知するにも時間が必要となるのです。
使用されている配管材料や劣化具合、マンションの規模や築年数によっても
工事内容は異なり、専門性の高さが追い討ちをかけて、さらに管理組合の足は
遠のきます。
さらに、必要な情報が得にくいことも一因となってしまいます。管理会社に
丸投げするのは不安だが、とはいえ、どこに相談したらいいのか分からない。
こうした情報の慢性的な不足が工事の遅れを助長してしまうのです。
管理規約に「専有部分である設備のうち、共用部分と構造上一体となった部分の
管理を共用部分の管理と一体として行なう必要があるときは、管理組合がこれを
行うことができる」等と盛り込んでおくと、管理組合主導で専有部分と共用部分の
一体工事が行えるようになるのではないでしょうか。
平成12年3月、最高裁から出された判決では下階の天井裏を通るスラブ下配管は
共用部分に当たると判示しています。
707号室の台所・洗面所・風呂・トイレから出る汚水については、同室の
床下コンクリートスラブを貫通して607号室の天井裏に配された枝管を通じて
本管(タテ管)に流れる構造になっている。
そのため、707号室から点検・修理を行うことは不可能であり、607号室から
その天井裏に入ってこれを実施するしか方法はない。
こうした事実関係のもとにおいては、その構造および設置場所に照らすと
本件排水管は専有部分に属しない建物の付属物に当たり、かつ、区分所有者全員の
共用部分に当たると解するのが相当である。と判断されました。
駐車場使用、管理費等での訴訟
駐車場使用での訴訟
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平成10年10月最高裁判所での判決事例を紹介します。
敷地内駐車場の使用料に関し、管理組合が新たに規約を設定して料金増額の
総会決議を行った。
そして、駐車場使用者に対して増額後の使用料を請求したところ、規約設定の
無効を主張して支払いを拒否。
そのため、管理組合が駐車場使用契約を一方的に解除した。というものです。
「増額の必要性及び合理性が認められる場合」、かつ、「増額された使用料が
当該区分所有関係において、社会通念上、相当な額であると認められる場合」
には、特別の影響を及ぼさないと結論付けています。
一般的に、使用料の増額は駐車場利用者に不利益をもたらすものですが、
十分な理由があり、かつ、影響が限定的であれば、値上げは容認できるとの
見解を示したのでした。
管理費等での訴訟
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平成14年に大阪高等裁判所で争われた、管理費等の滞納を原因とする専有部分の
使用禁止請求が否認された裁判を紹介します。
被告の区分所有者は平成3年から平成12年までの9年間、総額1,348万円もの
管理費などを滞納した。
管理組合は共同の利益に反する行為であるとして、当該区分所有者の専有部分の
使用禁止と滞納管理費の支払いを求めて提訴した。
第ニ審では、一転、管理組合の請求が否認される結果となった。
「管理費等の滞納は期間および金額双方において著しいもので、共同の利益に
反する行為に当たる」としながら、以下の理由により被控訴人(管理組合)の
請求を棄却した。
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1.専有部分の使用を禁止することにより、滞納管理費等を支払うようになる
関係にあるわけではない。
2.専有部分の使用を禁止しても、他の区分所有者に何らかの利益がもたら
されるわけでもない。
3.管理費等の滞納と専有部分の使用禁止には関連性がなく、専有部分の使用禁止を
認めることはできないと解するのが相当である。
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専有部分の使用禁止請求は、たとえば専有部分内で騒音や悪臭を発生させ、
他の区分所有者に迷惑を及ぼす行動をしている、あるいは専有部分を暴力団
事務所として使用し、周囲の居住者に恐怖を与えているなど、「積極的」に
区分所有者の共同の利益に反する行為がなされている場合に認められる。
共同の利益に反する行為の態様がこうしたケースとは異なり、専有部分の使用
禁止が認められるという関係にない。
つまり、「消極的」ともいえる加害行為に対してまで専有部分の使用禁止請求を
援用することは無理があるという解釈です。
騒音問題、ペット飼育での訴訟
騒音問題での訴訟
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最近の騒音問題の裁判事例を紹介します。
平成23年3月15日に東京地裁で、「上の部屋に住む男児が跳びはねてうるさい」
として、階下の夫婦が騒音の差し止めなどを求めた訴訟がありました。
裁判では、「我慢の限度を超えている」として、男児の父親に一定以上の騒音を
出さないよう、また、夫婦が求めた慰謝料計60万円のほか、妻が頭痛で通院した
治療費や騒音測定の費用も請求通り支払うように命じる判決を言い渡しています。
このケースでは、業者に依頼して騒音を測定した結果に基づいて、
「男児が跳びはねたり走り回ったりする音は生活実感としてかなり大きく聞こえ、
相当の頻度であった」と指摘、配慮すべき義務を父親が怠った、と判断されました。
一般的に「騒音」とされるのかどうかについては、平成24年に改正された環境省の
環告第54号に具体的な基準値が定められています。
それによると住宅地では昼間の騒音は50~55デシベル以下、夜間の騒音は
40~45デシベル以下とされています。
ペット飼育での訴訟
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東京地裁で争われたペット飼育訴訟を紹介します。
新築当初からペット飼育を禁止していたのですが、隠れて飼っている居住者が
いたことから平成14年に管理規約を改正。
それ以後、2年間の間にペットを手放す規則を追加しました。
ところが、期限が過ぎた後(2年後)も数人の居住者がペットを飼い続けたため、
管理組合から訴えられることとなってしまいました。
改正された管理規約は有効に機能しているため、規約違反とみなされてしまった
わけです。
被告(飼育者)は「ペットは人間生活に極めて重要な存在であり、危害を与えない
動物まで一律に禁止するのは人格権を侵害している」と主張しましたが、結果は
被告の言い分が退けられ、原告(管理組合)の請求が認められました。
「飼育禁止を望む居住者が多数おり、ペットを飼うことは区分所有法に定める
“共同の利益”に反し、人格権の過度の侵害とはいえない」というのが理由です。
マンションは1つの建物を複数の人が所有し、そこで生活します。
そのため、居住者1人ひとりの得失の他にマンション全体としての得失も同時に
存在するのです。
無断駐車、管理費滞納に関するトラブル
無断駐車でのトラブル
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居住者や来訪者が敷地内の空きスペースに勝手に駐車してしまったり、
来客用駐車スペースを占有してしまうというトラブルです。
特定の人が確信犯的に繰り返し、注意勧告にも無視をするなど、悪質性が強く
なるとトラブルに発展してしまいます。
無断駐車は、感情的な面ももちろんですが、実質的な面でもさまざまな問題が
あります。
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1.無料で使用しているという不公平感
2.車の出し入れに邪魔になる(ぶつける可能性)
3.各種設備点検の邪魔になる
4.消防車、救急車などの進路妨害
5.敷地内の見通しが悪くなり通行に支障(子供が危険)
6.縁石、芝生、植栽等を痛める可能性がある
7.来客駐車場を占有することで他者が利用できない
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区分所有法では、
「建物の管理または使用に関して、共同の利益に反する行為をしてはならない」
とされています。
深刻化する前に対策を立てていくことが大切です。
まず、駐車しないようお願いする張り紙を、その車に掲示します。
停まっていない時に、駐車禁止の張り紙を付けたコーンなどの障害物を置く
ことも有効です。
さらに、停めている人が特定できるなら、直接注意を促すことも必要でしょう。
それでも応じないようでしたら、車のナンバーなどから所有者を特定し、直接
撤去をお願いすることも考えられます。
管理費滞納に関するトラブル
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管理費や修繕積立金は、マンションを維持・管理するのに絶対必要なお金です。
区分所有法では、
「持分に応じてマンションの維持・管理に必要な費用を負担しなければならない」
と定められています。
滞納の発生を少しでも抑えるには、管理費の使途目的やその重要性と、滞納が
発生した時の対応方法を明確にすることで防止するしかありません。
初期の対応は、第三者である管理業者のフロントマンが事務的に行うのが
よいでしょう。
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1.電話督促
2.通常文書督促
3.訪問督促
4.内容証明郵便督促
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それでも期日通りに支払いが行われないときは、内容証明郵便で督促を行います。
法的な措置の際の証拠になりますし、相手方への意思表示としての効果も期待
できます。
支払いの督促に応じない場合は、訴訟とならざるを得ません。
支払督促制度・少額訴訟制度・通常の訴訟があげられます。
マンション管理費や修繕積立金の滞納には、時効があり5年となっています。
滞納が発生した場合、早期に対応する必要があるのです。
5年を経過しないうちに訴訟が提起され、判決により滞納者本人が滞納を承認
している場合や、滞納管理費等の一部を支払っているといった場合では、時効
は中断しておりますので、時効は成立しません。
マンションの管理費や修繕積立金は、実際に専有部分を使用しているかどうか
にかかわらず、区分所有者が負担することになっていますが、もし、管理費等を
滞納したままマンションが売却されてしまった場合、滞納管理費はどうなる
のでしょうか?
マンションを売却したからといって、債務から逃げられることはありません。
管理組合は、前所有者(滞納をした当人)と、中古マンション購入者の双方に
請求することができるのです。これは、任意売却でも競売でも同じです。
生活音、ペットに関するトラブル
最も多い生活音でのトラブル
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国土交通省がまとめた総合調査で「居住者の行為、マナーをめぐるもの」が
最も多くトラブルになっていました。
具体的には、「生活音」です。
生活音は人によって感じ方もいろいろですし、一度気になると音に対して
特に神経質に反応してしまう場合もあります。
苦情を相手に直接伝えるとトラブルとなりやすいので、まずは管理会社に相談
してください。
掲示板に張り紙をするとか、誰からの苦情だとは告げないでさりげなく注意を
するなどの、対処をいたします。
騒音の元となっている人に対して、間接的に「騒音が発生している」という
ことを伝えることも大切です。
また、平穏な生活や安眠を妨害する騒音トラブルがこじれると、訴訟になる
こともあるのです。
ペットに関するトラブル
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これまで、マンションという共同住宅でのペット飼育は問題点が多く、
禁止にしているマンションがほとんどでした。
しかし近年の少子・高齢化によるペットブームもあり、マンションライフにも
多様性が求められ、ペット共生マンション(ドッグランや足洗い場等の設備付き)
なども増え、マンションでの飼育がタブーではなくなりました。
それに伴い、飼育ルールの不整備やマナー違反、ペット禁止マンションでの
飼育など、さまざまなトラブルが発生しています。
鳴き声・騒音・臭気・共用部分の汚れや損傷・病気の感染・咬む事故等が
あげられます。
ペット飼育禁止マンションでの隠れ飼育問題などは、
「飼育をやめてください。」
「外に預けてください。」
「処分してください。」
などの対応となりますが、対応する側も対応される側のペットも悲しいことと
なってしまいます。
また、絶対にペットを飼わせないように管理することも、とても難しいこと
だと思います。
ペット飼育に否定的な居住者の理解を得て、厳格なルールのもとに飼育を認め、
ペットが嫌いな人も好きな人もお互いを理解して、迷惑をかけずに生活できる
環境を作り上げることがベストなのでしょうか。