災害時のマンション管理に関する課題
緊急時の合意形成等に関する相談
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<相談事例>
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●総会の開催を経ていない緊急修繕の手続きはどのようにすればよいか
●緊急理事会を招集して緊急工事の実施を決めたいが、出席記理事が不足して
理事会が成立しない場合どうすればよいか
●安全確保のため緊急に対応が必要だと思われるとき、その判断、工事の手配を
理事長が決めることが許されるか
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災害など緊急時に保存行為として管理者単独で意思決定できる範囲や総会開催が
困難な場合、理事会で緊急対応できる範囲を明確化し、また、緊急時の立入りを
含め、管理規約に定めて置く必要があるのではないでしょうか。
共用部分と専有部分の区分、費用負担に関する相談
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<相談事例>
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●住戸内の壁面(隣戸との隔壁)のクロスにクラックが入っている。構造体にも
クラックが入っているのか心配だが、その調査は管理組合がするのか、その場合の
仕上げの回復工事はどちらがするのか。
●サッシに歪が生じ、サッシの補修のための壁を壊さなければならないが、
壊した壁の内装工事は管理組合がどこまでやるのか。
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構造壁、サッシ等の共用部分の修繕のために壊すことになった専有部分の補修は、
原則は管理組合負担と考えられます。
しかし、専有部分であるクロスやボードの破損に対しては、専有部分の地震保険で
補償される場合もあります。
被害状況の把握に関する相談
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<相談事例>
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●倒壊の恐れはないと言われたが、余震でコンクリートが落ちてくる。
本当にこの建物は住み続けられるのか。
●応急危険度判定士に、倒壊の心配があるので補強をするように言われたが、
どのように補強すればよいか。
●きちんとした被害調査・診断をしたいが、どこに任せれて良いのか分からない。
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大震災発生時の被害調査は、広い範囲の建物の判定を迅速に行わなければならず、
専門家も全国から駆け付けます。
短時間で行わなければならない判定では、建物のどの部分を見るかによって結果が
異なることがあり、手際よくポイントを案内できることが迅速で正確な判断に
つながります。
その場合、専門家が立ち会うことができれば、管理組合にとっても心強いですし、
判定もスムーズに進みます。
震災による漏水事故に関する相談
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<相談事例>
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●温水器が倒れて漏水事故が発生した。そのように対処したらよいか
●専有部分からの漏水で下階に被害が生じた。責任の所在はどこのあるのか。
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貯湯式電気温水器は専有部分の設備ですから、経年劣化による交換工事は
各区分所有者が実施することとなります。
その時に、不適切な固定方法のまま放置されてしまう可能性があります。
管理組合で設置基準を作り、リフォーム申請時の審査と完了確認を実施する
ことも必要となってきます。
これに関しては、震災後、国土交通省から「電気貯湯器等の転倒防止措置の
点検等について」という通知が出ていますので、参考にしてください。
マンション管理のこれまでの国の取組み
管理組合と自治会との関係
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自治会は、一般に、同一地域内に居住する住民が、お互いの親睦を図ると共に、
行政機構の末端業務を補うような連絡活動などを行い、地域生活の向上のため
に作られる自治組織であるといわれています。
また、自治会は、自治組織なので、原則的には、これに参加するかどうかは、
賃借人等を含めた各居住者の自主判断によるものですから、それは任意加入の
団体でもあります。
したがって、管理組合が自治会活動をもその中に取り込んでいるケースと、
管理組合とは別に自治会組織を設けているケースがあるのです。
管理組合が自治会活動を行うにしても、その性格上当然限界が生じます。
<町内会費の徴収は管理組合の目的外とした例>
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平成19年8月東京簡易裁判決では、町内会費の徴収は、共有財産の管理に関する
事項ではなく、区分所有法第3条の目的外の事項であるからマンション管理組合
において多数決で決定したり、規則等で定めても、その拘束力はないものと
解すべきである。
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<自治会退会の申入れにより自治会費の支払義務を負わないとした例>
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平成17年4月最高裁判例では、自治会は、強制加入団体でもなく、その規約に
おいて会員の脱退を制限する規定を設けてていないのであるから、いつでも
一方的意思表示により自治会を脱会することができると解するのが相当であり、
自治会を退会する旨申し入れた場合、その後の自治会費の支払い義務は負わない
旨判示。
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マンションストック再生の取組み
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国土交通省新成長戦略が平成22年6月に閣議決定いたしました。
早期実施事項(2010年度に実施する)
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1.老朽マンションの改修に係る決議要件の適用関係の整理、管理生成化の推進等
マンションストック再生のための環境整備
2.ストック重視の住宅政策への転換を図るための「住生活基本計画」の見直し実施
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2011年度に実施すべき事項
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1.マンション管理適正化のためのルール策定
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2013年までに実施すべき事項
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1.老朽マンションの建替え・改修の促進策の実施
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需要の大幅増が見込まれるマンションの改修・建替え等については、管理への
無関心化、管理組合役員の担い手不足、老朽化が進んでおり(築50年超の分譲
マンション:1 万戸→94 万戸(20 年後))、住民の合意形成が課題となって
いるため、適切な長期修繕計画の策定と修繕積立金の積立を行うためのマニュ
アルの作成や標準管理規約などのマンション管理のルールの見直し、購入予定者
に対する適正な管理のための情報提供を行っている。
また、老朽マンションの改修・建替えを促進するため、改修や建替えの決議要件
等の見直しについて法務省と連携して検討している。
反社会的勢力の排除関係
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専有部分を暴力団事務所に限った場合、事務所と認定されていないものの、
暴力団員等が居住し、反復して不特定多数の関係者が出入りする場合の対応と
して、規約に暴排条項を定めておくことによって、暴力団関係者への譲渡・
賃貸等を禁止できる。
管理規約に暴排条項を導入しておき、かつ運用面においても暴力団・反社会的
勢力が介入し難い環境整備が必要。
被災マンション法の改正
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南海・東南海、東海地震が同時発生、M9級の地震となれば、津波等で32万人余
の犠牲が出ると政府が予測しています。
一方、首都直下型地震は4年以内に70%の確率で発生すると予測されるなど、
大地震の切迫が懸念されています。
そうした大規模な被災予測に対応して法務省は、区分所有建物の再建等に関する
特別措置法、罹災都市借地借家臨時処理法の改正について、法制審議会に部会を
設け、見直し作業を行い国会に改正案が上程されました。
専門業者・専門家への委託の状況
専門業者・専門家への委託の状況
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マンションの専門家を活用した管理方式として、2種類があります。
1.専門業者・専門家が管理者に就任する第三者管理者方式
2.管理者ではなく理事長等に就任する方式
区分所有者以外に管理を委託する第三者管理方式は平成19年度時点では、
まだ割合として少ないようです。
(区分所有者である理事長が管理者となっているマンションは89.0%、
区分所有者以外が管理者となっているマンションは5.1%)
築年数が長くなる程役員のなり手不足、区分所有者の高齢化、区分所有者の
無関心、沈滞化の進行が4大理由となり、管理組合等を十分サポートできる
専門的機能が必要となっているようです。
現在のマンション管理方式の主流
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マンション管理の基本法となる区分所有法は「総会中心主義」であり、
マンション内の決議は最高意思決定機関である総会ですべて最終決定される
仕組みになっています。
区分所有者から選出された各理事(役員)が理事会を通じて日常的な組合運営を
行ない各理事の互選によって理事長が選出され、理事長は管理規約・総会決議に
基づき管理事務を執行し、その職務に関して管理組合を代理する。
つまり、管理組合の代表者が理事長となります。
第三者管理者方式とは
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第三者管理者方式とは理事長に代わって第三者が管理組合を実質的に組織する
仕組み(方式)をいいます。
外部委託の関係にある管理会社が、第三者管理者方式では委任の関係は温存しつつ、
さらに組合代表としての業務も兼務するかたちとなります。
第三者管理者方式の検討すべき課題
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1.適正な業務遂行を図るための管理者の要件
2.管理者の業務範囲等の明確化と業務の適正確保
3.第三者管理者に対する監視機能の確立
4.組合財産の保全手法
マンション管理の現状と課題
分譲マンションをめぐる現状
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現在の分譲マンションの総ストック数は、平成22年末時点で約571万戸です。
現在も年間10~20万戸が新規供給しています。
その数は国民の1割以上約1,400万人が居住していることとなります。
東京都では、約4分の1、神奈川県では約2割、大阪府や京都府では約2割弱が
居住し大都市では主要な居住形態の一つとなっています。
分譲マンションの定義と特徴
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マンション管理適正化法による「マンション」の定義は、
「2以上の区分所有者が存在する建物で人の居住の用に供する専有部分のある
もの並びにその敷地及び付属施設」を言います。
適切な維持管理をするためには(特に共用部分)、区分所有者間の合意形成が
必要であり、共用部分の形状又は効用の著しい変更を伴う場合は、原則区分所有者
及び議決権の各3/4以上の同意が必要となるのです。
分譲マンションの管理の仕組み
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区分所有者の団体を「管理組合」と言い、区分所有者全員で「管理組合」を
構成します。
マンション管理の基本ルールとして「管理規約」を制定します。
(総会の特別議決(区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による議決)で制定・改正)
執行機関として、総会で選任された「理事」の中から理事長を互選し、理事長は
区分所有法上の「管理者」となります。
共用部分の管理に関することは、管理組合の「総会」で決議を要します。
(形状や効用の著しい変更の場合は3/4、それ以外は過半数)
理事長は、区分所有者の代理として管理規約・総会議決に基づき管理事務を
執行しなければなりません。
管理が不十分なマンションの問題
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「管理不全が著しくなる代表例」
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●賃貸住戸が半数を占めている
●高齢の単身者が多い
●役員のなり手がない
●管理費等の滞納総額が高額になる
●暴力団が住み着いていた
●漏水により部屋の天井や外壁が落ちた
●共用廊下のゴミがあふれ、照明も点灯しないまま
●共用玄関にチラシが散乱
●エレベータが稼働しない
●空室により約半数は電気メーターが止まっている
●敷地内に自転車が乗り捨てられている
●外部階段にサビ(躯体の中の鉄筋が露出しサビで爆裂)が生じ劣化が激しい
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管理組合がない又は機能していていないマンションは管理費の徴収が不十分となり、
財政面の悪化・居住環境面の悪化により資産価値の下落につながっていくのです。
自主管理マンション
多くのマンションでは、マンションの管理とは別に、普段お仕事をされている
区分所有者の方も多く、築年数の経過したマンションですと、管理組合の担い
手不足が深刻で、組合運営活動も機能しなくなってきているというマンション
も少なくありません。
マンションの管理業務までも、ほとんどのマンションで「やりたくてもできな
い」というのが実情ではないでしょうか。
自主管理マンションのメリットとしては、管理会社に支払うべき管理委託費が
必要ありませんので、管理会社が入っているマンションに比べて管理費が相対
的に安く済むということが、第一に挙げられます。
また、管理費の負担が大きかったり、高齢者ばかりで管理組合の担い手不足が
深刻になった場合、管理会社が何とか間に入って必要な業務を代行してくれる
こともありませんので、その影響がより深刻になりやすいと言っていいでしょう。
そこで、近藤リフレサービスでは、自主管理マンションのお困りごとを支える
業務を行っています。
自主管理マンションの場合、管理会社等の“プロ”からの情報提供が得にくい
ため、最新の法改正等の状況が把握できず、管理規約の内容が現行法に合致し
なくなったり、法的に問題のある状態が放置されたままであったり、等トラブ
ルが発生する場合があります。
その際、管理組合様の立場で組合運営を考え理解したうえで、自主管理運営が
円滑に進むよう、迅速・丁寧にサポートをさせていただきます。
「マンション管理の種類」
■自主管理:管理会社には委託せず、管理組合が自ら管理業務を行うとともに、
必要に応じて専門業者に発注・管理するもの
長所:管理費を安く抑えられる。管理組合の活動が活発になる
短所:管理組合の役員の負担が大きい
■一部委託管理:管理業務の一部を管理会社に委託するが、他の部分は管理組合
が自ら行い、管理組合として専門業者に発注・管理するもの
長所:全部委託管理より管理費を安く抑えられる。自主管理に比べれば役員の
負担が少なくてすむ
短所:管理会社や専門業者のコントロールが難しい
■全部委託管理:日常の清掃から管理員の派遣、設備類のメンテナンスまで、
管理業務の大部分をひとつの管理会社に一括して委託するもの
長所:管理組合の役員の負担が少なくてすむ
短所:管理会社任せになりがち。自主管理に比べれば管理費が高くなる