支払督促の注意点
マンションを健全に維持管理していくためには
管理費や修繕積立金(以下「管理費等」)の資金はとても重要ですが
管理で頭を悩ます問題に管理費等の滞納があげられます。
管理費等はそれぞれのマンションで毎月決められた日に
決められた金額を入金いただくのが原則ですが
残念ながら入金が滞る方は一定数おられます。
滞納者のなかには数か月、数年単位で滞納する方もいるので
管理組合はマンション維持管理の資金を確保するために
滞納した管理費等を回収しなければなりません。
回収の方法としては督促状の送付や電話での督促等さまざまですが
なかには注意が必要な方法もあります。
以前、別の管理会社から弊社に管理を変更して頂いた管理組合の理事長から聞いた話ですが
以前の管理会社に滞納者への回収方法として「支払督促」を勧められたため
それに応じたところ、滞納者から支払えないとの異議申し立てがあり
そのまま自動的に通常訴訟へ発展、裁判所に行かなくてはならなくなり困った、
「支払督促」とは、債権者からの申立てに基づいて
簡易裁判所の書記官が債務者に金銭の支払いを命じる制度です。
あまり費用をかけずに裁判所からの支払い命令を得ることができ
強制執行もできるようになりますが、
債務者から異議申し立てがあると、そのまま通常訴訟へ発展してしまうデメリットがあります。
そうなると弁護士を探す時間もあまりありませんので
代表者である理事長が裁判所へ行かなくてはならなくなります。
そうならないように、支払督促を行う場合は事前に弁護士に相談する等
異議申し立てに備えることが重要です。
ちなみに、滞納があるお部屋が売却された場合でも滞納は消滅せず
次の所有者(特定承継人)に引き継がれますが
管理費等は5年で時効を迎えてしまいますので
時効を迎える前に法的措置をおこない、時効を更新するよう心がけましょう。
修繕積立金はどうやって運用するの?
修繕積立金はどうやって運用するの?
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「銀行預金」「郵便貯金」「積立マンション保険」「国債」
「マンションすまい・る債」等があります。
管理費等は、適正に管理され、安全を第一として適正に運用される必要がある
ことはいうまでもありません。
管理組合の性格上、安全性及び流動性が最優先されるため、株式や先物取引等の
ハイリスク商品及び元本保証のない金融商品ではなく、元本保証の金融商品を
選択することが大原則といえるでしょう。
▼ 運用方法を決めるに当たって注意するポイント
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・元本保証が原則。(手数料も考慮)
・預け先金融機関の経営状態は健全か
・「銀行預金」「郵便貯金」は、補償は1金融機関1千万円まで。
・「国債」は、満期まで解約の必要がないように。
(途中で売ると元本割れする可能性あり)
・「積立マンション保険」は、破綻時100%でなく90%保証なので、保険会社
の経営状態もチェック。また、保険期間、保険金額は長期修繕計画を考慮して決定を。
・住宅金融公庫の「マンションすまい・る債」は申込み期間が限られており、
購入の条件があるので、早めに準備を。
・危機管理の意味で分散が必要だが、余り分散するとかえって目が届かなくなる
・修繕積立金の運用方法の決定は、総会決議事項。
・預け先が破綻しそうなときに、総会を経なくとも緊急対応できるよう、
ルールを明確に。
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修繕積立金の管理体制
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管理組合の役員が、総額約3千万円の住民から預かった管理費等を横領したと
の報道が以前にありましたが、このような不祥事を防ぐために管理組合として
どのようにすればよいでしょうか?
▼ 安全管理のためのチェックポイント
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・口座の名義人=理事長は組合員か、交代の度に名義変更しているか。
・通帳、印鑑は常に別々に管理しているか。
・大きなお金が動くときに、確かに相手に入金になったか確認しているか。
・会計監査をきちんと行っているか。
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同じマンションに住んでいる仲間同士で、不正防止は言いにくい点もあるかと
思います。
しかしながら、今まで度々同様の事件が発生しているなかで、一人の人間に任せ
きりにせず、お金に関しては二重三重のチェック体制を作ることが重要です。
そしてまず「通帳と印鑑」は別々に保管されているかどうかを確認してください。
組合名義の口座から預金を引き出そうとした場合、組合名義の通帳と印鑑が
セットで手元になければ預金は引き出せません。つまり、通帳と印鑑を分別して
管理していれば、おのずと不正な引き出しは防げるのです。
口座が複数ある場合には数名の役員で分散管理すると効果的でしょう。
特定の役員が1人で保管し続けると、魔がさしてその役員が愚行に手を染める
心配があるからです。
管理費と修繕積立金の違いとは?負担はどうやって決めるの?
管理費と修繕積立金の違いとは?
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区分所有者(組合員)は、毎月管理費と修繕積立金を管理組合に支払わなければ
なりません。
「管理費」は管理組合の「管理費会計」に入り、規約で定められた
「管理費」の使途=通常の管理(日常の管理)に要する経費に充当し、
「修繕積立金」(分譲当初に収めた「修繕積立基金」や、不足時に徴収される
「一時負担金」も含む。)は、管理組合の「修繕積立金会計」に入り、積み立て
られます。この2つは使用目的が異なっているのです。
▼ 管理費の具体的な使途には以下のようなものがあります。
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・共用部分設備の保守・管理費
・清掃費やゴミの処理費用
・管理員の人件費
・植木・植栽の管理費
・管理組合の運営費、備品費、事務用品費、通信費、その他の事務費
・共用部分の水道光熱費
・マンションの広報やイベントにかかる費用
・公租公課
・火災保険や損害賠償保険などの保険料
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修繕積立金は、将来的に必要となる修繕のための工事や、共用部分の改修工事、
建物の検査などに備えて積み立てられるものです。
マンションは必ず老朽化しますし、その時になって工事費用を集めても、多額の
費用の場合は集められないことも考えられます。
そのために前もって貯金をするわけです。
当然、その使用に関しては、管理組合の承認が必要になってきます。
管理費が足りないからといって、「修繕積立金」を安易に取り崩すことはできません。
管理費や修繕積立金の負担はどうやって決めるの?
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標準管理規約では、共用部分等の管理に必要な費用を、「管理費」と
「修繕積立金」に区分して、区分所有者の支払義務を定めています。
区分所有法19条(共用部分の負担及び利益収取)
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各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担
に任じ、共用部分から生じる利益を収取する。
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特別の取り決めがなければ、共有持分割合=床面積の割合で、その負担が決まります。
修繕積立金は、マンションの区分所有者でなくなっても返却はできません。