第三者管理方式とは
昨今、管理組合で深刻な問題となっているのが役員のなり手不足です。
分譲マンションでは築年数の経過に伴い
今まで役員を担ってきた方たちの高齢化が進み
役員業務を行うことが困難になってきたり
共働き夫婦の増加により
役員業務に時間を割くことが難しくなったなどの理由で
役員の就任を辞退するケースも多いようです。
実際、役員業務を積極的に行うとなると
時間に余裕があり、ある程度の体力がある人でなければ難しく
その様な人は限られてくると思います。
そうした問題を受け、国土交通省は2016年に
「標準管理規約」の見直しを行い
所有者以外の外部の専門家を管理者として選任する方法
つまり管理組合が管理者業務を
第三者(管理会社など)に委託する方式が条文で追加されており
大手の管理会社では第三者管理を引き受けているところもあるようです。
※現段階では弊社は第三者管理をお受けしておりません。
第三者管理方式には、基本的に以下の3つのパターンがあります。
1.第三者が管理者兼理事長に就任(理事会あり)
2.第三者が管理者に就任、区分所有者が理事長に就任(理事会あり)
3.第三者が管理者に就任、理事長はいない(理事会なし)
このうち3は、日常的な修繕や居住者間のトラブルの解決など
管理業務のほぼ全権を第三者にお任せする方式となり
区分所有者の負担は大きく軽減されます。
但し、以下のデメリットが考えられます。
①通常の管理委託契約とは別契約となり、現在の委託費にプラスして高額な費用が掛かる。
②工事などで管理会社に都合がいい業者を選定するおそれがある。利益相反のおそれがある。
③理事会はなくても、区分所有者から監事を選任する必要がある。
①についてはいわずもがな
管理会社が理事会の負担を一手に担うことになりますので
それなりの費用が掛かると考えられます。
②については、理事会(理事長)の承認を得ずに工事を発注できるため
相場よりも高額な工事費用が掛かる恐れがあり
それを防ぐためには事前に厳格なルールを定めなくてはなりません。
たとえば、大規模修繕工事の発注先を選定する際などにも
相見積もりの取得基準を設けたり
管理者の自社もしくは自社グループに対する発注ルールなどを
明確化しておく必要があります。
大規模修繕工事などの高額な費用が掛かる工事では
検討委員会を設けた方が良いでしょう。
③については、管理者を監視する立場として
区分所有者から監事を選任する必要があります。
結果的に、監事が今までの理事長のような責任的立場になると考えられます。
このように、第三者方式の3には
区分所有者の負担を大きく軽減できる一方
費用の問題であったり、信頼性の問題であったりなど
様々なデメリットもあり一長一短です。
管理会社に依頼する場合は、システムをよく理解した上で
理事会で充分な検討を重ねてからにしましょう。
個人賠償責任保険について
マンションのオーナーとなった際に
ほとんどの方が火災保険の加入を検討されるかと思いますが
火災保険と併せて付保しておきたい保険が
「個人賠償責任保険」です。
「個人賠償責任保険」とは
自動車事故以外の日常生活の事故により
他人にケガをさせたり他人のモノを壊してしまい
法律上の損害賠償責任を負った場合に補償が受けられるものですが
この保険、マンションにはつきものである漏水事故にも対応しています。
マンションで漏水事故が発生した場合
被害に遭われた下階のお部屋を原状回復する必要がありますが
この費用は漏水発生元である上階オーナー(または居住者)が
全額負担しなければなりません。
その際、「個人賠償責任保険」を付保していれば
この費用の一部または全額が補償の対象となり
上階オーナーの負担軽減が見込めます。
下階の原状回復費用は被害の状況によってまちまちですが
なかにはかなり高額な請求となるケースもあります。
例として、私が直近でご対応させていただいた
漏水事故3件の下階の原状回復費用をあげますと
・Aマンション 663,300円(天井ボード交換、クロス貼替、フローリング貼替)
・Bマンション 316,250円(天井ボード交換、クロス貼替、照明器具交換)
・Cマンション 1,370,600円(天井・壁ボード交換、クロス貼替、フローリング貼替)
※いずれも税込み
個人でお支払いするにはかなりの負担ではないでしょうか。
管理組合でも共用部分で付保している
「マンション総合保険」の特約としてこの保険が付いていることがあり
その場合、マンション内の漏水事故であれば
どのお部屋でも保険申請が可能ですが
近年の保険料値上げにより
この保険を付保しない管理組合も増えてきています。
ご自身のマンションでこの保険に加入しているか
一度ご確認をお勧めします。
もし管理組合でこの保険を付保していない場合は
ご自身の火災保険に「個人賠償責任特約」が
付保されているか確認してみてください。
(保険会社によっては「日常生活賠償責任特約」だったりと名称は様々です)
火災保険以外でも
例えば自動車(じどうしゃ)保険に付いているケースもあります。
自転車(じてんしゃ)保険でしたら
それだけで「個人賠償責任保険」と同じ補償が受けられますので
新たに付保する必要はありません。
いずれの保険にもない場合は付保を検討してみてください。
月額にすると数百円程度の負担で付保出来るところがほとんどですので
もしもの備えとしては高額ではないと思います。
漏水事故はいつ発生するかわかりません。
突然高額な費用を請求をされる前に、備えておきましょう。
大規模修繕工事とは
マンションを適切に維持管理していく上で重要な「大規模修繕工事」
理事会役員や修繕検討委員にならないと
どのような工事をおこなっているかなかなか分かりづらいと思います。
※修繕検討委員とは、大規模修繕に関する計画や決定事項などを
専門に行う委員会のメンバーのことです。
国土交通省のガイドラインでは、大規模修繕工事は
「マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や
必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち
工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間にわたるもの等をいう。」
と書かれており、大体12年~15年に一度行うのが望ましいとされています。
具体的には、屋上やバルコニーの防水工事
外壁の下地補修・タイルの貼り替え・塗装、鉄部の塗装
シーリングの打ち替え等行い
場合によっては給水管や排水管の更新を行う場合もあります。
但し、工事内容はあくまでも管理組合が決めることであるため
必ずしもこの内容で行うとは限りません。
例えば屋上防水工事は足場を必要としないため
防水の状態が良好であれば、実施時期を延期することもあります。
大規模修繕工事を行うにあたり
理事会役員や修繕検討委員は次のようなことを行っています。
①建物の劣化状況を調べる
②劣化状況を基に、工事の内容を決める
③決めた工事内容で、(複数の)業者から見積りをとる
④見積りを基にどの業者に依頼するか決める
⑤工事内容、業者を決めたら総会に上程する
※上程とは、議案などを会議にかけることです
⑥総会にて可決承認後、業者と契約し、具体的な工事の日取りを決める
⑦工事中、追加で必要な工事が発生した場合、都度検討する
⑧工事が概ね終了したら、検査を行う
⑨検査終了後、業者から提出される工事完了報告書を確認し、工事終了
工事費用は戸あたり100万円が目安とされていましたが
築年数によりやらなければいけない工事が大きく変わってくるので
一概にはいえません。
また、最近は物価高騰のあおりを受け、工事金額が跳ね上がっているため
予想より見積が高額になることが多いです。
資金不足により工事が延期とならないように
管理組合は普段から修繕積立金を計画的に貯めていくことが重要です。
専用使用権について
マンションは「専有部分」とそれ以外の「共用部分」に分かれています。
「専有部分」はお部屋内、個人の所有(区分所有)となり、個人の財産です。
逆に「共用部分」はマンションの区分所有者全員の所有となり
共有の財産となる部分のことを言いますが
共用部分には専用使用権が付与された「専用使用部分」というものが存在します。
「専用使用部分」は特定の所有者が排他的に使用できる部分のことで
代表的なのは「バルコニー」。
仕切りで覆われていてそのお部屋の居住者しか使用しないため
感覚としては個人の所有に思えますが
区分所有者全員の所有となる「共用部分」であると同時に
その人しか通常使用しない「専用使用部分」となります。
※緊急時は避難経路になることもあります。
バルコニーの他に、専用使用部分には次のようなものがあります。
玄関扉外側、インターホン、玄関ポーチ、室外機置場、窓ガラス(サッシ含む)
専用庭、駐車場、駐輪場、給排水管の一部など・・・
「お部屋の外」にあって、「その人しか使わない」部分と考えれば
「専用使用部分」かそうでないかの区別がつきやすいと思います。
「専用使用部分」は「共用部分」であることから
計画的に全体で修繕を行うことがありますが
通常の管理は専用使用権を有している人が行うことになるため
例えばインターホンの修理や庭の草むしり、集合ポストのダイヤル交換は
一般的に個人でおこなうことになります。
もちろん、管理組合でおこなうこともありますが
それは各管理組合の方針により異なります。
弊社で管理させて頂いているマンションでも
集合ポストのダイヤルが故障した時や、玄関ドアの建付けが悪くなった時などに
管理組合の方針により、管理組合の費用負担で修理しているところもあります。
但し、「専用使用部分」は取り扱い方法や使用頻度により劣化が異なってくる部分が多いので
基本的には個人で直すという認識でいて
壊れたら一応管理組合に相談してみるのが良いと思います。
また、玄関等一部の「専用使用部分」については
景観の観点から修理はいいが交換は不可としているところが多いと思います。
後にトラブルにならないように、こちらも事前に管理組合に確認しましょう。
管理組合とフロントマン
「フロントマン」とは、管理会社の担当者で管理組合運営(マンション管理)に
必要な業務を幅広くサポートしてくれる人のことです。
フロントマンは優れたコミュニケーションスキルが必要な仕事で、総会や理事会
の資料作成、点検業者のスケジュール調整・作業の割り振り、管理規約や使用細
則等の作成、理事会役員様の要望を聞いたり、区分所有者等のクレーム対応など
役目は様々あります。
与えられた業務をこなすだけでなく、管理組合運営において自ら動いてくれる人が、
優秀なフロントマンといえるでしょう。
豊富な知識はもちろん、交渉力も必要となるため、ある程度の経験は必要不可欠です。
経験の浅いフロントマンばかりいる管理会社は、労働環境や経営そのものに問題を
抱えている場合があり、サービスの質も低い傾向にあるといえます。管理会社全体の
社員の平均勤続年数も確認すると管理会社の質を見極めるのに、役に立ちます。
フロントマンは定期的にマンションの巡回を行っていますか?
設備の不具合やマンションの老朽化など、危険が及ぶ可能性がある場合、フロントマ
ンが定期的に巡回し点検・確認をしていれば、大きな事故につながることは少なくな
ります。
また、日常的にマンションの清掃をしたり安全面やセキュリティ面で見回りを行う管
理員が、不愛想で挨拶をしなかったりすると、居住者は顔を合わせるだけでも気分が
悪くなったり、マンション全体の雰囲気も良くありません。そのためフロントマンは、
管理員の勤務態度に問題はないかもチェックしています。
管理会社は、マンション内で発生したトラブルはもちろん、管理規約違反、管理費の
滞納など迅速かつ適切な対応が求められるため、直ちに管理組合の理事会へ報告を行
い必要に応じ適切なアドバイスをする姿勢が必要不可欠です。
問題を先送りにしているフロントマンが担当だと重大な問題につながり、取り返しの
つかない状態になる恐れとなり、マンションの価値そのものに影響してくる重要なこ
とにつながります。
もしトラブルが発生した際、フロントマンは、どう対応し、どんなアドバイスをして
もらえるか、きちんと確認しておくと良いでしょう。