排水管清掃の実施率を上げるために
マンションの排水管清掃は
排水管の詰まりや悪臭などのトラブルを防止するために
定期的におこなうことが望ましく
年に1回程度実施しているマンションが多いと思います。
排水管清掃とは、住戸内の台所・洗面所・風呂場・洗濯機の排水を流すための管を
高圧洗浄ポンプを用いて水の力で
管内の汚れをそぎ落としていく洗浄作業になります。
なるべく下の階から清掃をはじめることにより
管内の清掃作業中に下部が詰まって
上から汚水が溢れ出るといった事故を防ぎます。
余談ですが、近年ドラム式洗濯機を使用する方が増えてきましたが
ドラム式は本体サイズが大きいため
設置スペースの問題で洗濯機の下に排水口が隠れてしまい
洗濯機下の排水口からの清掃ができないケースが増加しています。
ドラム式洗濯機は重量があるため自力で移動させることは困難です。
清掃業者によっては一時的に洗濯機を持ち上げるなどの対処をする場合もありますが
洗濯機の故障や壁面の破損の原因になるため、あまり一般的ではありません。
こういった場合には、 洗濯機の下部にスペースを空けるための
嵩上げ台なども市販されているため
設置を検討してみるのも良いかと思います。
排水管は各住戸の床下の横引き管から共用の竪管につながっているため
部分的に清掃をおこなっても効果が薄いので
できるだけ多くの住戸で清掃をおこなうことが大切で
住戸内への立ち入りが必須となる作業です。
しかしながら、実際には協力を得られない居住者も多く
実施率が上がらない問題が起こっているマンションも多いのではないでしょうか。
実施率の低いマンションの傾向として
「共働き夫婦の多いマンション」や「賃貸がメインのマンション」で
より実施率が低い傾向にあります。
前者は仕事などの都合により在宅できない
後者はあくまでの借りているだけの部屋なので維持管理に理解が浅い
といった理由が聞かれます。
管理会社も各部屋の鍵を預かることは原則としてありませんので
代わりに実施することは出来ません。
こうした問題を解決することは容易ではありませんが
実施率を高める方法として、以下のような案があります。
①清掃実施日を増やす
排水管清掃の実施日を増やすことによって、居住者の選択肢が増え
仕事などの都合により実施できない方を減らすことが期待出来ます。
実施日を増やす場合、事前に居住者へ
どの曜日が良いかアンケートを行うことにより
期待できる効果が目に見えて判るので
検討してみるのもいいでしょう。
但し、実施日を増やすことにより
当然ながら業者手配の費用がより多く掛かりますので
事前に費用対効果を検討してから増やすのが良いでしょう。
②排水管清掃の重要性を記載した書面を配布する
排水管清掃を「実施することにより得られる効果」(悪臭の軽減など)
「実施しないことによるリスク」(管の詰まりによる排水の溢れ
他の住戸への漏水事故など)を記載して
実施を促す書面を配布してみるのも一つの手です。
居住者の中には、排水管清掃の重要性が
あまり判らない方もいるかもしれませんので
理解を深めてもらうことにより、実施に前向きになってもらいます。
全ての方に効果があるわけではありませんが
一部の方には実施するきっかけになるかもしれません
マンションの排水管清掃は法定業務ではありませんが
汚れが蓄積してからでは深刻な問題が発生することもあるため
定期的に清掃が必要です。
また、前述したとおり居住者の在宅が必ず必要になります。
そのため、居住者の都合で
毎回同じ部屋で排水管清掃を実施できない事例も多いのが実態です。
しかしながら、長期間清掃を実施しないと、排水不良が生じて
場合によっては排水が漏れて下階への漏水事故につながる恐れもあるため
先程提示した案のように
できるだけ実施率を高めるための工夫が必要となります。
理事会役員のなり手不足を解消するには
昨今、マンションでの理事会役員のなり手不足は深刻化しており
弊社で管理させていただいているマンションも例外ではありません。
マンションの築年数の経過に伴い居住者も高齢化し、体力的に難しい方や
若くても仕事で忙しい方
単純にマンションの維持管理に無関心である方などの増加により
輪番制で役員が回ってきても欠席ばかりで
実質役員業務をしていない人が増えました。
特に出来るけどやらない「無関心層」の増加は深刻です。
以前、私が担当しているマンションで
欠席者が抽選で理事長に就任したことがあり
本人にそれをお伝えしたところ
「忙しいのでやらない」と一方的に断られてしまったこともありました。
管理会社は理事長を選任する立場になく
あくまでも決定事項をお伝えするだけですので
こういった場合、対処が非常に難しいです。
結局、その時は別の役員様に事情をお伝えして理事長に就任いただきましたが
マンションの維持管理にご理解のある方に負担が集中してしまっている現状は
やはり好ましくないと思います。
以前のブログで役員の負担を減らすための方法として
第三者管理者方式をご紹介しましたが
それなりの費用が掛かるので実際依頼できる管理組合は多くないと思います。
今回は、なるべく費用を掛けずに
役員のなり手を誘致する方法を考えてみたいと思います。
役員を誘致するには、仕事を理解してもらうことと
参加しやすくする環境が大事だと思います。
あくまでも一例ですが、理事会の改善点を考えてみました。
役員の業務は明確であるか?
役員をしたくない理由の一つに
「何をしたらいいか判らない」いう方がいると思います。
どのような仕事があるのか、生活にどのくらいの負担になるのか
といった不安要素があり
役員の就任を嫌う傾向があるようです。
役員になった場合、どのような仕事をおこなうか明確化することにより
「思ったより難しくないな」とか
「これくらいの負担で自分のマンションを守る為なら」といった
意識の方を役員に誘致することができます。
管理会社に業務委託しているマンションでは
役員業務は大きく軽減されていると思いますので
まずはそれを知ってもらうことが大事だと思います。
無駄な理事会をしていないか?
マンションによっては月に1回程度
必ず定例で理事会を開催している所もありますが
定例なので検討する事項がない時でも開催されるので
ほぼ雑談だけで協議が終わってしまう場合も少なくありません。
人によってはこの雑談の時間が無駄に感じることがあり
建設的でないなら参加しないといった考えの方もいます。
定例の理事会は廃止して
協議の必要な事項が出来た時に都度理事会を開催するようにすれば
開催の頻度を減らせますし、雑談も減ります。
効率的な理事会を開催することにより
「効率的に理事会に参加したい」といった人を誘致できます。
役員数は適正か?
役員の人数は、マンション毎に管理規約に定められています。
極端に役員が多い場合には管理規約を改正して
役員の定数を減らすことも有効な方法です。
役員の適正な人数は一概にはいえませんが
管理会社に業務委託している一般的なマンションでは
役員の人数があまり多くないほうが
速やかな理事会運営となることが多いようです。
役員資格の拡大
法令上は役員の資格についての制限はないため
管理規約を改定することにより
役員の資格要件を拡大することができます。
多くの管理組合では役員の資格については
管理規約では区分所有者であることを要件としています。
理事のなり手を確保するという目的であればこうした要件を廃止し
配偶者や親族等もOKにすれば
高齢の区分所有者でもご自分の代わりをたてられますので有効です。
しかし、区分所有者以外の例えば賃借人等が役員になった場合には
区分所有者の利益に反する方向に
話が進んでしまう可能性もあり得ますので
資格の拡大範囲は慎重に検討しましょう。
役員のなり手不足が悪化すると
マンションの維持管理ができなくなり
結果的に資産価値の低下、最悪の場合スラム化につながります。
抜本的な解決方法はありませんが
区分所有者が少しでも役員に参加しやすくする環境を整えることが大事だと思います。
宅配ボックスのトラブル
ネット通販の急速な普及や新型コロナウイルスをきっかけとして
マンションにおける宅配ボックスの需要はかなり増えました。
弊社の管理マンションでも、荷物の再配達を減らす目的や
置き配による廊下での私物放置の問題を懸念して
新たに宅配ボックスを設置するところがいくつかあり
設置工事の見積取得や設置場所を検討し、理事会に提案したことがあります。
宅配ボックスを設置したことに伴い居住者の利便性は向上しましたが
それに伴い宅配ボックスを巡る様々なトラブルも増えたのも事実です。
例えば、暗証番号が書かれた配達票がポストに入っていたが
暗証番号を入力しても開かないですとか
宅配ボックスの空きが無く利用できないといったご相談が増えました。
暗証番号の違いは居住者から宅配業者に問い合わせても
「間違いなくその番号で入れました」との回答しかなく
結局水掛け論で終わってしまうようです。
最終的に弊社などの管理会社がマスターキーで開錠しに行きますが
試しに書かれた暗証番号を入力してみてもやはり開かないので
間違った番号で施錠してしまった可能性が高いです。
宅配ボックスの空きの問題は、利用者増によるものもありますが
配達票の入れ忘れにより長期間入庫したままの荷物があったり
私物が入っていたりといったことも原因の一つです。
なかには、悪質な宅配業者が入庫場所を確保しているのか
空のまま施錠されていることも度々あります。
最近の宅配ボックスは、そういった暗証番号の違いによるトラブルや
悪戯等に対策する為の工夫が施されています。
居住者には予めお部屋ごとの暗証番号が与えられており
取り出す際は部屋番号と暗証番号を入力して取り出すので
暗証番号による間違いが起きません。
また、宅配業者が荷物を入庫する時は
部屋番号を登録しなければ入庫出来なく
且つ液晶ディスプレイに入庫された荷物の部屋番号が表示されますので
悪戯をされづらいです。
ご自身のマンションで宅配ボックスをリニューアルしたり新たに設置される際は
上記のような機種を選択されてると更に利便性は向上されますので
検討されてはいかがでしょうか。
理事長の仕事とは
理事会の役員が輪番制になっている管理組合は多いと思いますが
その場合、抽選等により思いもよらず理事長になってしまうといったケースもあります。
いままで理事会・総会にあまり参加してこなかった方は
理事長がどのようなことをしているのか見当もつかないと思いますが
実際どのようなことをしているのでしょうか。
今回は、管理会社と管理委託契約を結んでいるマンションで
理事長がどのような仕事をしているか、ご紹介したいと思います。
・重要書類の引継ぎ・保管
前任の理事長から管理組合の重要書類を引継ぎ、保管します。
点検・修繕の報告書や会議の際に使用した資料などの多くは
管理室や管理会社で保管できますが
管理会社で保管することが好ましくない書類(例えば管理会社との契約書など)は
理事長が保管します。
・銀行印の引継ぎ・保管
管理組合は、区分所有者から管理費や修繕積立金などを徴収したり
各種費用を支払う業務を行うため
銀行をはじめとする金融機関に預金口座を開設しています。
理事長が変更になりましたら
前任の理事長からこの預金口座の銀行印を引継ぎ、保管します。
預金の口座の通帳を管理会社で保管し
銀行印を理事長が保管し分別管理することで
不明な出金を防ぐ狙いがあります。
各種費用の支払いが発生した場合
管理会社は金融機関の振込書類を作成し
理事長に捺印いただくことで、支払いを行います。
・預金口座の名義変更
通常、ほとんどの管理組合は法人化していないため
法人格のない団体となり
預金口座は「○○マンション管理組合 理事長〇〇 〇〇」という名義で
各種取り引きを行うことになります。
理事長が変更となりましたら
預金口座の名義を今の理事長の名義に変更する手続きを
金融機関にて行います。
身分証明書以外の必要な書類は管理会社が準備してくれます。
・月次収支報告書の確認
管理会社は毎月、「月次収支報告書」を作成し
管理組合に報告しなければなりません。
これは「マンション管理適正化法」という法律で義務付けられており
管理会社はその月の収支報告書を管理費会計、修繕積立金会計と区別して作成し
1ヶ月以内に書面で管理組合の管理者(理事長)等に交付しなければなりません。
月次報告書に添付されている資料は管理会社によって異なりますが
一般的には貸借対照表、未収金一覧表等も添付します。
理事長は毎月月次報告書を確認し、管理組合の収支を把握します。
・理事会や総会の開催
理事会はその期の役員のみで行う会議で
総会は組合員全員で行う会議です。
マンションの修繕やトラブルの解決など
マンションを維持管理していくための会議を行います。
軽微な修繕やトラブルの解決などは理事会で決定することが多いですが
大きな修繕や決定事項などは、理事会で方針を決めて
年に1度の総会で議案として組合員に上程します。
理事会は年に数回開催し、総会は通常年に1度開催されます。
(緊急で決めたいことがある場合、臨時総会を開催する場合があります)
理事長は議長として、日時と議題を決めて会議の進行を行いますが
管理会社が代わりに進行を行うことも可能です。
・各種契約の締結
工事や点検、清掃を業者に依頼する際の契約や
共用部分の保険契約は、理事長が締結します。
・居住者からの相談やトラブル発生時の対応
居住者の方からの相談やマンションでトラブルが発生した時に
解決すべく対応します。
理事長本人に相談してくるケースもあれば
管理会社経由で相談があるケースもあります。
理事長ひとりで判断するのが難しい場合は
理事会で協議を行うか、管理会社に相談します。
上記はあくまでも一般的な業務ですので
管理組合によっては、別に特殊な仕事を行っている場合もあります。
仕事は多岐にわたり、最初は考えることが多く
負担に感じることもあるかもしれませんが
判らないことがあれば管理会社のフロントになんでも相談してみましょう。
理事長職を務めることは
ご自身のマンションを知る良い機会でもあります。